ネイティブに伝わるビジネス英語:
日本人の英語を知りつくしたベストセラー英語教師、デイビッド・セインさんによる連載「ネイティブに伝わるビジネス英語」。今回からは「エレベータースピーチ編」。ネイティブに言いたいことが伝わり、かつエレベーターに乗っている短時間で相手の心をつかめる英語表現を紹介します。
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●エレベータースピーチが出世のカギに
住生活グループの藤森義明社長は、エレベータースピーチで成功をつかんだ1人。雑誌『理念と経営』の2011年11月号で重要性を明言しています。
藤森社長は今のポジションにつく前はGEに所属して、GE代表取締役兼CEOを務めていました。そのGE時代に肌で感じたのが、エレベータースピーチの必要性と重要性。ビジネス界で生き残るためには、人生で成功するためには、この能力がないと駄目だとひしと感じたそうです。
というのも藤森社長はGE時代、新旧CEOである、ジャック・ウェルチやジェフリー・イメルトとのコミュニケーションは本当にごく短い時間に限られて、エレベーター内のわずか15〜30秒が常でした。ここでプロジェクトの評価を聞かれ、うまく答えられなければアウト。相手に興味を持たれなければプロジェクトも個人も、まったく評価されないのです。昇進もなにもあったものではありません。
その現実にがくぜんした藤森社長は、自身のプレゼンテーション能力を磨くためアメリカに渡って徹底的に訓練しました。そして、いつでもはっきりと分かりやすく伝えたいことをごく短時間で凝縮して伝えるテクニック、エレベータースピーチを身につけました。
そして最終的にGEでの最高ポジション、代表取締役兼CEOに登りつめます。そして、今の会社でも代表執行役員社長として活躍しています。エレベータースピーチはアメリカではごく当然のビジネススキルの1つです。英語を使って仕事をする場合、このエレベータースピーチがいかにうまくできるかによって、今後のビジネス、そしてあなた自身の人生の明暗が大きく分かれるといっても過言ではありません。
エレベータースピーチのスキルは、磨いておいて損はありません。むしろ、一歩抜きんでるために、今すぐにでも手に入れたいビジネススキルなのです。
●使って便利なエレベータースピーチ
では具体的にどのようなシーンで使えるのか。エレベータースピーチはこんなふうに使ってください。
あなたはとっておきの新商品のアイデアを思い付きました。商品化を提案したいのですが、営業部所属のあなたは製造部門のトップを説得しないといけません。そんなとき、製造部門のトップと偶然エレベーターに乗り合わせました。これは千載一隅のチャンス! ここで大活躍するのがエレベータースピーチです。基本3行で、言いたいことを伝えます
(1)Hi, I’m Taro Miura in Sales. I have an idea for a new product, and everyone I’ve talked to says it’s revolutionary.
(こんにちは、営業部の三浦と申します。実は、新商品のアイデアがあります)
(2)It’s based on suggestions from our clients.
(最近クライアントからご提案いただいたことなのですが)
(3)I can summarize my idea in a one-page report that I’ll send to you tomorrow, if you don’t mind.
(よろしければ、明日1ページのリポートにまとめてお送りします)
このスピーチによって、何もしなければお蔵入りになっていたアイデアが、一転、製品化への最短ステップを進み始めるかもしれません。アイデアが実現される可能性がぐんと高まるのです。
またエレベータースピーチは、日常的なコミュニケーションでも使えます。普段忙しくてなかなか時間をとってもらえない上司が、今ちょっとだけ時間がありそう。最近、あなたをずっと悩ませている案件について、ぜひとも話し合いの場を持ちたい。では、どうしたらミーティングにこぎつけるか。
次のようなエレベータースピーチで話しかければ、上司も打ち合わせに応じてくれると思います。ポイントはここでも3行構成であること。
(1)Hi, I’d like to brainstorm with you on a problem I’m having.
(部長、ちょっとご相談したいことがあります)
(2)We need to find a way to a turn ABC into a happy customer.
(ABC社を満足いただける顧客にするよい方法を見つける必要があります)
(3)Could we talk about it this afternoon?
(本日、午後どこかで30分ほどいただけませんか。)
エレベータースピーチは、ちょっとしたチャンスに自分の伝えたいことを明確に伝え、かつ相手の記憶に深く印象付けるスピーチです。
●エレベータースピーチで自分の魅力を高める
エレベータースピーチは、お偉方へのリポートやプレゼンテーションのためだけに使うスキルではありません。どんどん普段のコミュニケーションに取り入れましょう。
日常的なコミュニケーションの積み重ねで、人の印象は形作られていきます。分かりやすい話をする人はそれだけで評価が高くなります。
あなたにもこんな経験はないでしょうか。
「つまらない話を聞かされたせいで、仕事が進まなかった」
「無駄に長いスピーチにあくびが出た」
「もっとコンパクトに話をまとめれば済むことなのに、どうしてこんなに長く話すのか分からない」
恐らくあなたが抱いた、こういう話し手への印象は決してよくないことでしょう。
相手の時間を余計にとってしまったり、言いたいことをうまく伝えられず、相手を悩ませてしまったりすると、相手をイライラさせてしまうので、あなたの評価が下がってしまいます。
できるだけ分かりやすく、短い時間で話すことを、常日ごろから心掛けたいもの。嫌なヤツ、使えないヤツと思われないためにも、オススメします。そうすればコミュニケーションがラクになり、人間関係もぐんとスムーズになります。
●スティーブ・ジョブスは優秀なプレゼンテーター
エレベータースピーチは、まさにショートサイズのプレゼンテーション(プレゼン)といってもいいでしょう。プレゼンという言葉を聞くと腰がひける人がいるかもしれませんが、エレベータースピーチを成功させるには、あなたも立派なプレゼンテーターになる必要があります。スライドやパワーポイントなどの道具に頼らない、言葉だけのプレゼンのコツをおさえましょう。
2011年10月5日に亡くなったアップル社の創業者であり、元CEOのスティーブ・ジョブスは、独創的なアイデアだけでなく、聴衆を魅了することに長けたプレゼンテーターとしても知られています。「スティーブノート」と言われた彼の基調講演には、よい席を確保するために真冬でも徹夜で並ぶ人がいたそうです。
彼の講演の魅力は、ちみつに構成されたシナリオに沿って示される印象的なメッセージにあります。
「宇宙に衝撃を与えたい」
「今日、アップルが電話を再開発する」
「僕にとってコンピュータというのは、人類が考えた最高のツールだ。知性の自転車といったところかな」
「このチップからすばらしい音が生まれる」
「iPodより高価なスニーカーもある」
「画面にはとても見た目のよいボタンを配した。思わずなめたくなるだろう」
彼が残した名言をいくつか並べてみましたが、どれも短いフレーズで商品の魅力を的確に伝える、広告コピーに匹敵するメッセージ力があります。こうした言葉を、初対面の人から投げかけられたらどうでしょうか? 恐らく、それだけで無視できなくなるはずです。誰もがもう一度会ってもっと話を聞きたいと思うのではないでしょうか。これが限られたわずかな時間で人を引きつける言葉の力です。
スティーブ・ジョブスのメッセージは、アドリブで生まれた言葉ではありません。計算し尽くされた言葉なのです。例えば広告コピーは、書いてしまうとただの短いフレーズですが、このフレーズが生まれるまでには、商品のメリットを徹底的に考え、ターゲット層を研究分析し、何度もメッセージを書き換えながらブラッシュアップしていく作業が何度も繰り返されています。そして、この作業こそが、短い時間で人を引きつけるエレベーター・スピーチの準備にも必要なのです。
●のんびり聞いてくれるほど、みんな暇ではない
エレベータースピーチは、エレベーターの中だけでのコミュニケーションスキルではありません。与えられたわずかな時間で、伝えたいことを相手に伝えるスキルです。
アメリカ映画『ワーキング・ガール』のような劇的な出会いばかりでなく、取引先の企業の担当者や上司、営業先の役員や社長、直属の上司や社長など、さまざまな立場の人との普段のコミュニケーションでも役立ちます。エレベータースピーチを身に付ければ、もうあなたはどんな場面でも「何を言っているのかわからないんだけど」「要するに言いたいことは何だ?」「話は手短に頼む」などといったリアクションはとられなくなるでしょう。
要点を簡潔に伝えることができると、相手にとらせる時間はわずかですみます。10秒でも相手に無駄な時間だと思われてしまってはそこから先に進めません。用件は手短にすませる、それを心掛けるだけでも、あなたの印象はよくなります。
スピードが求められる今のビジネス社会では、責任を負う立場になればなるほど、ゆっくり時間をかけて人の話に耳を傾ける余裕はなくなっています。だからこそ、ビジネスシーンでは、特に短い時間で伝えたいことを伝えるスキルが必要なのです。
のんびり聞いてくれる時間がないからといって、全く時間がとれないというわけではありません。それこそエレベーターに同乗した、あるいは廊下ですれ違ったといった、わずかな時間をチャンスととらえ、積極的に話しかければいいのです。
例えば空港ラウンジやオフィスビル内にあるカフェで偶然隣り合わせになることもあるでしょうし、オフィスビルのロビーや玄関ですれ違ったり、タクシーを待っている列に一緒に並ぶこともあるでしょう。一緒に行動することが多い、直属の上司が対象なら、30秒くらいの時間はいつでも見つけられるはずです。また、自分を売り込むターゲットが決まっている場合も、それくらいの時間ならきっと見つけられるはずです。
次回からは、実際に使えるビジネススピーチの文例を紹介していきます。
[デイビッド・セイン,Business Media 誠]
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